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育児・介護休業法が改正されました

はじめに

育児休業等は、子育てをしながら働く母親にとって重要な制度ですが、最近では、イクメンなどと呼ばれるように子育てに積極的な父親も増えているようで、父親も育児休業を取得するケースが見受けられます。

労働者の育児休業等については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」に規定があります。

この育児・介護休業法が平成21年に改正され、改正された主要な部分については平成22年6月30日から施行されます。

今回は、この育児・介護休業法の育児に関する規定及び今回の法改正について考えてみたいと思います。

育児・介護休業法が改正されました

育児・介護休業法とは

  1. 目的
    近年、わが国では出生率が著しく低下しており、その1つの要因として仕事と家庭の両立が困難であることが考えられました。そこで、女性労働者の能力発揮という観点と少子高齢化社会への対策という観点から、平成3年、「育児休業に関する法律」として制定され、さらに、介護休業の制度化への要請もあって、「育児・介護休業法」として新たに成立し、その後も改正が重ねられました。
    同法は、「子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、労働者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資すること」を目的として掲げています。
  2. 育児・介護休業法には、主なものとして、次のようなことが定められています。
    • 育児休業の取得
      1歳未満の子を養育する労働者は、その子が1歳になるまでの一の期間を特定してその事業主に申し出ることにより、取得することができます(5条1項、4項)。事業主は、要件を満たした労働者の休業申出を拒むことは原則としてできません(6条1項)。
    • 子の看護休暇の取得
      病気・ケガをした小学校就学前の子の看護のための休暇(看護休暇)を取得することができます(16条の2)。
    • 労働時間の制限
      事業主は3歳までの子を養育する労働者が請求したときは、一定の条件に該当しない限り、所定労働時間を超えて労働させてはならない(16条の8、所定外労働時間の制限)。また、事業主は、小学校就学の始期に達するまでの労働者が請求した時は、一定の条件に該当しない限り、1月24時間、1年150時間を超えて、労働時間を延長してはならないし(時間外労働の制限、法17条1項)、深夜(午後10時から午前5時)に労働させてはならない(深夜業の制限、19条1項)。
    • 事業主は、育児休業を取得せずに3歳までの子を養育する労働者が希望する場合には、その者に対して、短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けなければなりません。
    • 不利益取扱いの禁止
      育児休業・看護休暇・所定外労働時間の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限の申出をし、またはそれらの措置を受けたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(10条、16条、16条の4、16条の9、18条の2、20条の2、23条の2)。

改正で何が変わる?

今回の改正では、「父親も子育てができる働き方の実現」、「子育て期間中の働き方の見直し」などがポイントとなっています。具体的には、

  1. 「父親も子育てができる働き方の実現」
    • 育児休業期間が延長されました(パパ・ママ育休プラス)
      改正前は、父親も母親も、子が1歳に達するまでの1年間育児休業を取得することができました。
      改正後は、母親(父親)だけでなく父親(母親)も両方が育児休業を取得する場合に限り、育児休業を取得できる期間が、子どもが1歳2カ月になるまでに延長されました(2カ月分は父親(母親)のプラス分、9条の2)。
    • 父親は育児休業を2回取得できます。
      改正前は、育児休業の取得は、特別な事情がない限り、1人の子につき1回に限られ、申し出る休業は連続した1つの期間でなければならず、配偶者の死亡等の特別な事情がない限り、再度の取得はできませんでした。
      改正後は、出産後8週間以内の期間内に、父親が育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度の取得が可能となります(5条2項)。
    • 配偶者が育児休業中や専業主婦(夫)であっても育児休業を取得できます。
      改正前は、配偶者が育児休業中や専業主婦(夫)のように常態として子を養育できる場合には、労使協定の定めにより、出産後8週間以内を除いて、育児休業を取得することができませんでした。
      改正後は、労使協定の有無にかかわらず、配偶者が育児休業中や専業主婦(夫)であっても育児休業を取得することができます。
  2. 「子育て期間中の働き方の見直し」
    • 子の看護休暇が拡充されます。改正前は、看護休暇を取得できる日数は、労働者1人当たり年5日が限度でした。改正後は、看護休暇の取得可能日数が、小学校就学前の子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日取得することができるようになりました(16条の2)。
    • 育児子育て中の短時間勤務制度、所定外労働の免除の義務化改正前は、3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度、所定外労働(残業)免除制度などから、1つを選択して制度を設けることが事業主の義務でした。

改正後は、3歳までの子を養育する労働者について短時間勤務制度(1日原則6時間)を設けることは事業主の義務になり、また、3歳までの子を養育する労働者が請求すれば所定外労働が免除されることになりました。

おわりに

会社においては、改正に伴い、制度の制定、就業規則の改正などの整備をする必要があるでしょう。 なお、従業員100人以下の企業については、2年後まで適用が猶予されます。

今回の改正により、父親、母親ともに、より子育てをしながら働きやすい環境が整い、ワークライフバランスの実現につながっていくのか、注目したいところです。

H22.06掲載

※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。