中小企業の法律相談

福岡の弁護士、近江法律事務所が提供している法律コラムです。

ご存知ですか?下請法

下請いじめの予防

下請法(下請代金支払遅延等防止法)という法律をご存知でしょうか。規模の大きい会社(親事業者)が規模の小さい会社や個人事業者(下請事業者)へ、製品の製造を委託したり、機械・設備等の修理を委託する場合に、弱い立場にある下請事業者を保護するため、親事業者の義務や禁止行為を定めた法律です。一言でいえば、親企業の下請企業に対する「下請いじめ」を防止・排除する法律です。

我が国における下請取引は、親企業と下請企業とが長期にわたる継続的な取引関係にあり、しかも下請企業が特定の親企業に売上の大部分を依存していることが特徴です。このため下請企業は親企業のむちゃな要求に逆らいにくく、「下請いじめ」の温床となっています。

ご存知ですか?下請法

被害申告なしに調査し是正を命じる仕組み

不当な返品や買いたたきなどの親企業の「下請いじめ」は、優越的地位の濫用であり、独占禁止法による規制対象となります。しかし、独占禁止法に基づく公取委の調査は、被害者の訴えを受けて初めて開始されるのが通常で、また審査・審判手続に時間がかかりすぎ、手遅れとなることがあります。他方、下請法では、公取委や中小企業庁が、下請いじめに遭った下請企業の訴えがあれば当然、訴えがなくても自ら調査を行って違反行為を発見し、下請いじめがあった場合には行政の力で解決する仕組みとなっています。

公取委が下請法違反行為に対して平成22年度に実施した指導件数は4226件、勧告件数は15件にものぼります。そして、公取委が事件として調査に乗り出したきっかけの実に95%は、下請事業者の被害申告ではなく、公取委が実施した書面調査を端緒としているとのことです。

また、指導・勧告によって、下請事業者が被った不利益の原状回復が実現しているとの報告も注目されます。例えば、下請代金の不当減額事件に対する指導・勧告の結果、平成22年度だけでも、98名の親事業者から4356名の下請事業者に対して、合計10億3145万円が返還されたとのことです。

平成15年の法改正をきっかけに、下請法の運用が強化され、下請事業者にとっては非常に頼もしい法律となりました。

対象となる下請取引

  1. 製造委託
    自社が販売する物品、他社から製造・加工を請け負った物品などについて、製造加工を他の事業者に委託した場合に「製造委託」に該当することになります。
  2. 市場で普通に販売されている物品を購入することは製造委託にあたりませんが、その一部分でも自社用に加工してもらって購入すれば、製造委託に該当します。
  3. 修理委託
    親事業者が物品の修理を自社で行っている場合に、その修理を下請事業者に委託する場合をいいます。
  4. 情報成果物作成委託
    ソフトウェア開発業者が、販売するソフトのプログラム作成を他のソフトウェア業者に委託する場合、請け負ったソフトウェアの開発の一部を他のソフトウェア開発業者に委託する場合などが情報成果物作成委託に該当します。プログラム以外にも、放送番組やデザイン、設計図などが情報成果物に該当します。
  5. 役務提供委託
    トラック業者が請け負った貨物運送を他のトラック業者に委託する場合や、ビルメンテナンス業者が請け負ったビル清掃を他社に委託する場合などが役務提供委託に該当します。

下請法の規制を受ける企業

資本金が一定額を超える事業者が、資本金がその一定額以下もしくは個人事業者と取引を行う場合、下請法の適用対象となります。

H24.6掲載

※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。