中小企業の法律相談

福岡の弁護士、近江法律事務所が提供している法律コラムです。

著作権侵害をしていませんか

著作権侵害のリスク

たとえば、他人のホームページのイラストをコピーして自社のホームページに使用する、市販のソフトウェアを1部だけ購入し複数のパソコンにインストールして使用するといった行為を安易に行っていませんか。これらの行為は、著作権を侵害するおそれがある行為です。

著作権侵害を行った場合、民事上、差止・損害賠償・不当利得返還等を請求される可能性がありますし、刑事罰が科せられる可能性もあります(平成16年著作権法改正により刑事罰が強化され、3年以下の懲役が5年以下に引き上げられ、また、300万円以下の罰金が500万円以下に引き上げられ、さらには、それらを併科することも可能となりました。)。

また、近時は、「著作権等管理事業法」に基づいて登録を受けた著作権等管理事業者によって、著作物の集中管理事業が行われるようになってきており、また、平成15年、損害賠償請求がより容易に行えるよう著作権法が改正されていることから、損害賠償等を請求されるリスクは従来よりも高まっているといえます。

これらのリスクを回避するためには、著作権法で保護される対象が何かを理解して、著作権を侵害する行為を行わないようにすること、そして、著作物を利用する必要がある場合には、著作権者と利用許諾契約を締結した上で利用することが必要となります。

著作権侵害をしていませんか

著作権法の保護対象

  1. 著作権法で保護される対象となるのは、「著作物」(著作権法2条1項1号)、「実演」(同項3号)、「レコード」(同項5号)、「有線放送」(同項9号の2)です。
     以下、最も問題になることが多い「著作物」についてみていきます。
  2. 著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(同項1号)。したがって、1.「思想・感情の表現」であること、2.「創作性」を有すること、3.「表現物として存在すること」、4.「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」ことという4要件を満たすものが著作物となります。
     つまり、単なる事実やデータはそれ自体では著作物とはなりませんし(1.)、事実やデータを工夫して表現した場合であっても、それがありふれた表現であればやはり著作物とはなりません(2.)。また、アイデア、思想、感情そのものは著作物とはなりませんし(3.)、たとえ技術的に優れた作品であっても工業製品であれば著作物とはなりません(4.)。 
  3. 著作権法10条は、著作物の具体例として、「言語著作物」、「音楽著作物」、「舞踊・無言劇著作物」、「美術著作物」、「建築著作物」、「図形著作物」、「映画著作物」、「写真著作物」、「プログラム著作物」を掲げていますが、これらはあくまでも例示にすぎず、これらに属さない場合でも前述の4要件を満たすものは、著作物となりえます。
     ただし、前述の4要件を満たすか否かの判別が微妙な場合も少なくなく、最終的には裁判所の判断を待たざるをえないこともあります。

利用許諾契約を締結する際のポイント

  1. 以上から、利用しようとする表現物が「著作物」であると解される場合、それを利用するためには、著作権者との間で利用許諾契約を締結する必要があります。
     その利用許諾契約を締結する際には、その著作物に対して、誰がいかなる権利を有しているかを確認したうえで、誰と何をどこまで契約するか明確にすることが肝要です。
  2. 著作物を創作した著作者には、著作権法上、何らの方式を要すことなく、著作物を創作した時点において、「著作権」と「著作者人格権」とが認められます。
     「著作権」は、著作物の利用に関する排他的・独占的な財産権で、「複製権」(著作権法21条)、「譲渡権」(同法26条の2)、「貸与権」(同法26条の3)、「二次的著作物の利用権」(同法28条)等の支分権からなります。著作者は、自己の著作物を他人が利用することについて、自由に許諾したり譲渡したりすることができ、その許諾についても、独占的利用権を認めることも制限的利用権を認めることもできますし、一部の支分権だけを譲渡することもできます。
    「著作者人格権」は、「公表権」(同法18条)、「氏名表示権」(同法19条)、「同一性保持権」(同法20条)からなります。これらは、著作者の人格的利益を保護するために認められた著作者固有の一身専属的な権利であり、著作権とは異なって譲渡することができません(同法59条)。
     したがって、著作権が既に第三者に譲渡されていた場合、「著作権」は譲渡を受けた第三者に属するものの、「著作者人格権」は著作者に残り続けるという事態が生じますし、さらに、著作権の一部についてだけが譲渡されていたり、利用許諾されたりしていた場合には、「著作権」についても、複数の者が様々な権利を有するという事態が生じます。
     そこで、利用許諾契約を締結する際には、権利を有していない第三者と契約を締結してしまうという事態を避けるため、当該著作物に対して、誰がいかなる権利を有しているかをしっかりと確認してください。

最後に

 以上のポイントを押さえれば、著作権対策はそれほど困難ではありません。

 安易に著作権を侵害し、民事上、刑事上の責任を追及されることがないよう十分にご注意下さい。

H17.11掲載

※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。